
书籍名
絵図の史学 「国土」?海洋认识と近世社会
判型など
440ページ、础5判、上製
言语
日本语
発行年月日
2022年8月15日
ISBN コード
978-4-8158-1062-7
出版社
名古屋大学出版会
出版社鲍搁尝
学内図书馆贷出状况(翱笔础颁)
英语版ページ指定
地図とは、限定的な共同体を超えた「他者」に语りかけ働きかけるための重要なツールである。本书はこの理解にたち、歴史における地図作成行為の意味を论じた。
*本书をはじめとする诸论考の中では、「近代的地図」とは异なる特质を持つ近世日本の空间表现を指す用语として、当时の史料用语である「絵図」を用い、両者を包含する概念として「地図」を使用してきた。
本書の前提となったのは、助手時代に採択された、科学研究費補助金?国際学術研究共同研究「日本中近世における社会情報と政治文化- 絵図史料を中心として」(研究代表者?東京大学教授黒田日出男、1995~1997年度) を皮切りに、国内外の研究者?多様な職掌の専門家たちと、さまざまな共同研究体制を組み、「地図とは何か」という問いを追究した、二十余年に及ぶ道程であった。
本书をまとめながら、原本调査の场で得られた所见をそれぞれの専门を生かしながら议论する楽しさ、その结果今まで见えてはこなかった新たな风景が次々と眼前に现れてくる、共同研究の醍醐味を思い返さずにはいられなかった。
前述の国际共同研究の成果として刊行した、『』(黒田日出男、メアリ?エリザベス?ベリ、杉本編、東京大学出版会、2001年) の序文に編者として指摘したのは、地図をかつてのような「自然を映す中立的な鏡」とみて単線的な科学的地図発達史のなかに位置づけるのではなく、複雑で多価な世界を、選択し解釈して二次元表現に転換したものであると理解する、1980年代以降の諸分野横断的な潮流であった。 この研究潮流の中では、地図作成の持つ権力性が注目されてきた。
本书ではさらに、高度に成熟した絵図文化を创り上げていた近世日本を舞台に、社会のなかのさまざまな势力や集団が、地図作成によって、他の集団や自然と対峙し生き抜いていく具体像を描き出した。その际、その地図の作製や使用にかかわる関连文字史料の分析を详细に行うと同时に、色彩や図?线を駆使した単なる文字记述を超えた表现方法である地図を分析するために、身分制社会における色彩やモノの意味、制作者や読者の特质まで视野に入れ、地図を作るという行為がどのような意味をもっていたのかを问うという方法论をとったことが、本书の特质のひとつとなっている。
本書のもうひとつの特質として、海洋からの視点で「日本」史を見直すという視点を提示した点をあげることができる。東京大学史料编纂所が前身の政府組織から引き継ぐ書類保管庫 (赤門書庫) に、十九世紀の航海用の地図 (海図) 群を発見し、公開に向けての史料学的検討を行う事業を主宰したことは、それまで無意識に陸の視点から歴史を眺めていたことに気づかせてくれた。
そこから、経纬度データをもち、国家が测量から制作?贩売まで统括した海図を「近代的海図」として捉え直し、この「近代的海図」や蒸気帆船の実用化よってもたらされた、海洋と人との関わりあいの変化という新たな视角を见出した。近代化过程において、この変化が、国土観や、陆上に构筑された社会を変容させていったことを明らかにするという、それまでに移行期研究を问い直す歩みを进めることなった。
このなかでは、19世紀半ばに刊行された木版日本図『官板実測日本地図』が、実は、開成所 (幕府の洋学教育研究機関。頻繁に名称が変更されているので、開成所と総称する) が創り上げた、史上初の、「日本」の範囲をいかに表示するかという問題意識に基づいた「国土」図であり、当時の太平洋をめぐる政治情勢をみすえた、薄氷を踏むような慎重な表現をとっていたこと、近世的「国土」観から近代的国土把握へと移行する過程をその描写に体現した稀有な地図であることを突き止めた。
终章の文章をもって、この绍介文をしめくくろう。
人间は、生きのびるために集団を作り、自然や、他者と、闘ってきた。そのなかで、地図という表现はその全体をみることはできない世界や社会に理解可能な姿をあたえるものであり、人间がそれらに対して何らかの行动を起こすことを可能にする、强力なツールとなってきた。世界や社会を図化し可视化するという行為は、他者に対しての、支配や、合意や、主张と、深くかかわっている。
本书で明らかにしてきたように、世界や社会の视覚化は、各时代の特性を背负ったこのような営み?衝突?合意?駆け引きの动态のなかに置いたとき、はじめて、その时代において有していた意味や机能を雄弁に语り始める。
「絵図の史学」の意义は、ここにある。
(紹介文執筆者: 史料编纂所 教授 杉本 史子 / 2024)
本の目次
はじめに
1 基礎的考察
2 近世 —— 絵図の「開花の季節」
3 海陸の視座をもった近世?近代移行期論へ
4 本書の構成
第I部 国絵図と日本図
—— 近世の「国土」把握
第1章 アジアのなかの政治地図
—— 国絵図と日本図
はじめに
1 徳川政権下の巨大地図
2 徳川型政治地図の成立
3 新しい海洋の登場と統一的国土表現の試み
おわりに —— 絵図の時代の终焉と「地形図」の登場
第2章 国絵図と近世社会
はじめに —— 歴史のなかの国絵図
1 「公儀」と空間把握 —— 元禄国絵図
2 空間把握の展開 —— 天保国絵図
おわりに
補 論 境界上の地名は誰のものか
第3章 国絵図研究の歩みを俯瞰する
—— 19世紀から21世紀へ
はじめに
1 研究前史
2 国絵図研究の本格化
3 国絵図に関する国際的な研究発信
おわりに
第II部 新たな海洋把握と「日本」の创出
&尘诲补蝉丑;&尘诲补蝉丑;「国土」の変容
第4章 新たな海洋把握と「日本」の创出
—— 開成所と幕末維新
はじめに
1 新たな海洋把握とその意味
2 「日本」の創出
3 日本図布告
おわりに
第5章 可视化された首都と政体
—— 近代的海図と船艦の19世紀
はじめに
1 近代的海図と船艦
2 日本沿海測量問題と海洋情報 —— 文久元年の異例の老中弁明書
3 可視化された首都と政体 —— 海図 Gulf of Yedo
4 船艦というアクター ——『戊辰己巳官軍諸艦記事略』から
5 船艦保有情報の統合と海洋知再編の試み
おわりに
第6章 近代国家形成过程再考
—— 海洋から見たジオ?ボディ
はじめに
1 状 況
2 ジオ?ボディの創造
おわりに —— 海陸の視点をもったジオ?ボディ概念へ
第III部 表现する人々
—— 社会の側から諸世界を構想する
第7章 歌舞伎作者并木正叁
—— 交差する複数「世界」と「日本」
はじめに
1 「三千世界商往来」の時空
2 「日本」とその外
3 作者としての並木正三
4 近世身分秩序のなかの役者と作者
おわりに
第8章 一覧図絵师五云亭贞秀
—— パノラマ式広域鳥瞰錦絵が描く激動の政治社会
はじめに
1 五雲亭貞秀研究史と本章の視点
2 貞秀の出版図の2つのジャンル —— 地図と錦絵
3 文久行列図の位置と特質
4 変動期の社会と貞秀の出版図
おわりに
第9章 书かれたものに対する统制
—— 出版検閲体制のなかの絵図と錦絵
はじめに
1 統制の流れ
2 天保改革と検閲分掌体制
3 絵図に対する検閲
おわりに
第IV部 モノと色彩
—— 空間表現を支えるもの
第10章 史料学の试み
——「モノとしての史料」を問い直す
はじめに —— 歴史研究という行為
1 「日本古文書学」の成立と史料学の展開
2 「古文書?地理の解放」「物語からの解放」としての近代
3 「モノとしての史料」を問い直す
おわりに —— 歴史研究という表現
第11章 构造体としての絵図
はじめに
1 モノとしての絵図
2 内容表現の思想
おわりに —— 構造と動態のなかの絵図?地図
補 論 復元研究が明らかにしたこと
第12章 色彩の时代
はじめに
1 色をかたちづくるもの
2 自然は何色か —— 彩色材料から見た絵図
3 2つの緑色 —— 空間分割の技法
4 輝きと普遍 —— 秩序表現としての彩色
おわりに
终 章 国土?海洋认识と近世社会
はじめに
1 近世的「国土」とその変容
2 世界や社会を描く
おわりに
関连情报
第1回 (2023年度) 中川久定記念基金由学館賞 受賞 (一般財団法人中川久定記念基金 2023年12月8日)
讲演会:
第一回 中川久定記念由学館賞 記念講演会
杉本史子「海の地図と陆の地図から江戸时代を问い直す―研究の道程と『絵図の史学』」 (一般财団法人中川久定记念基金 2024年5月18日)
书评:
上杉和央 評 (『日本歴史』第904号 2023年9月)
後藤敦史 評 (『歴史評論』第881号 2023年9月)
後藤敦史 評 (『史学雑誌 2022年の歴史学会-回顧と展望』第132編第5号 2023年6月)
川村博忠 評 (『地図情報』Vol.43, No.1, No.165 2023年5月)
平井松午 評 (『人文地理』第74巻 第4号 2022年)