腰痛の原因になる腰部癒着性くも膜炎の惭搁滨を用いた新しい诊断アプローチ 非侵袭的な画像撮影方法でくも膜下腔の神経の癒着を确认する


腰部癒着性くも膜炎がある患者さんとない患者さんに、惭搁滨検査を行いました。惭搁滨検査は通常、仰向けでしか撮影しませんが、うつ伏せでも撮影を行い、背骨の中にある神経が通るトンネル内で重力に応じた神経の动きを可视化しました。(补)と(产)は癒着性くも膜炎がない患者さんの画像で、(肠)と(诲)は腰部癒着性くも膜炎がある患者さんです。また(补)と(肠)は仰向けで、(产)と(诲)はうつ伏せで撮影したものです。白い矢印は重力の方向を示しています。腰部癒着性くも膜炎の患者さんでは、重力によって神経が腹侧に降りてこず、神経同士と神経とトンネル(硬膜)壁がひっついている(癒着している)ことが分かります。
© 2019住谷昌彦
腰痛は日本人の患者さんが诉える最も多い疾患ですが、约20%が非特异的腰痛と呼ばれ、はっきりとした病因が分からないため适切な治疗が难しい腰痛です。このなかには腰椎の手术は上手くいっているのに痛みが残ったり、あるいは、画像诊断では腰椎の狭窄(きょうさく)がないのに手术后に徐々に痛みやしびれが再発した患者さんも含まれています。このような非特异的腰痛のなかには、腰椎によって构成される脊柱管のさらに内侧を走るくも膜下腔という神経のトンネル状の通り道の中で神経同士あるいは神経とトンネル壁(硬膜)がひっつく(癒着する)ことによって痛みやしびれが起こる腰部癒着性くも膜炎が含まれている可能性があります。腰部癒着性くも膜炎は、一旦発症すると长きに渡り生活の质を落とし、最悪の痛みと言われる程の激しい痛みを経験する事になります。しかし、腰部癒着性くも膜炎の诊断基準は、世界中を探しても存在せず、非常に稀な疾患として认识されています。
东京大学医学部附属病院麻酔科?痛みセンターの住谷昌彦准教授、土田陆平医师(医学博士课程4年)らの研究グループは、诊断のつかない腰痛に悩む患者さんの中に、腰部癒着性くも膜炎を疑う患者さんがある一定数いる事に気づきました。そこで腰痛の原因検索のための磁気共鸣画像(以下、惭搁滨)を用いて、その诊断アプローチの研究を行いました。
これまでに腰部癒着性くも膜炎を疑う惭搁滨や脊髄造影検査での画像诊断として1980年代に欧米で典型的な腰部癒着性くも膜炎の画像として提案された所见がありましたが、このような画像所见を示す患者さんは非常に稀で、ほとんどの腰痛患者さんでは観察されませんでした。そのため、腰部癒着性くも膜炎が疑われなかったのです。今回、惭搁滨検査を仰卧位(仰向けの姿势)と腹卧位(うつ伏せの姿势)によって行い、神経のトンネル(くも膜下腔)内を走行する神経の位置を比较することによって腰部癒着性くも膜炎を诊断(神経同士あるいは神経とトンネルの癒着を発见)できることを明らかにしました。
惭搁滨検査は被曝しない非侵袭的な検査であり、通常の诊疗で腰痛を详しく调べる际に必要な検査の1つです。撮影时の体位変换により早期に诊断がつく事で、患者さんの生活の质を落とさず、复数の医疗机関を受诊せずに済み、医疗费の軽减に繋がります。
今后は、腰部癒着性くも膜炎が神経障害により痛みを引き起こしている事を採血や髄液検査によって定量的に评価し、惭搁滨検査と组み合わせる事で、より正确に癒着性くも膜炎の诊断がつけられるようにしたいと考えています。
「腰痛はよく闻く名前であり、ありふれた痛みと思うかもしれません。ところが腰痛を详しく调べてみても、现代医学では原因がわからないものが含まれており、精神的な问题と决めつけられていこともあります。腰部癒着性くも膜炎は诊断基準がない疾患で、その症状の1つに腰痛があります」と住谷准教授は话します。「今回、私たちの研究により提案する画像诊断方法は、惭搁滨検査时に体位変换を追加する事で、腰痛や下肢痛の原因となる神経の癒着を可视化したことになります。私たちは、実际の患者さんの诊疗を通じて感じた疑问や観察所见を、痛みに苦しむ患者さん达が少しでも痛みから解放されるよう生かしたいと考えて诊疗と研究をしています。今后、腰部癒着性くも膜炎の痛みの原因が、神経が障害される事によって起こっている事を定量化し、より早期に腰部癒着性くも膜炎を発见し、治疗が行えればと考えています」と続けます。
论文情报
Rikuhei Tsuchida, Masahiko Sumitani, Kenji Azuma, Hiroaki Abe, Jun Hozumi, Reo Inoue, Yasushi Oshima, Shuichi Katano, Yoshitsugu Yamada, "A Novel Technique Using Magnetic Resonance Imaging in the Supine and Prone Positions for Diagnosing Lumbar Adhesive Arachnoiditis: A Preliminary Study," PAIN Practice: 2019年7月20日, doi:10.1111/papr.12822.
論文へのリンク ()