物质の中の阶层性 创発物性科学が切り开く新しい未来

神経细胞を一つだけ取り出してきて、そこに记忆や感情、意识がある、と言うことはできません。しかし、神経细胞が复数集まると、私たちの脳が行っているような、高度な情报処理が立ち现れてきます。そこには异なるロジックでしか理解し得ないような断絶、阶层があります。はたしてこのような阶层性は、神経细胞よりもずっと単纯だと思われるような、「ただの物质」にも见られるものなのでしょうか?
创発物性
工学系研究科の十仓好纪教授(理化学研究所创発物性科学研究センター併任)は、大学学部生に向けた固体物理学(物質の性質を調べる分野)の授業を、「金属が鏡の光沢を示すのも、葉っぱが緑に見えるのも、そして、そもそもモノに色がつくということ自体が、すべて電子の動きのせいなのです。」という言葉から始めることにした、と言います。どういうことでしょうか?
「电子の动きのせい」と言っても、ひとつひとつの电子が金属光沢を示したり、モノに彩りを与えたりするわけではありません。そうではなく、电子の相互作用こそが重要である、ということが、この言叶が本当に意味することです。
物质をバラバラにしていった先のミクロの状态(原子の配列や原子同士の结合の様子、原子まわりの电子の振る舞い)を理解することで、物性(力学的性质、电気的性质、磁気的性质、光学的性质など)というマクロの状态が理解できると考えたくなるかもしれません。しかし、个々の要素を集めた结果、全体として要素の総和以上の特性が现れる「创発」という现象が现れるとき、ミクロの状态に分解して理解していく还元主义的なアプローチはあまり有効ではなくなります。
先の言葉にある通り、物性は、電子の創発現象です。流行りの言葉を創るのが得意なんです、とはにかみながら語る十倉教授は、自身の研究分野を「创発物性科学」(=「創発」+「物性科学」)と呼んでいます。物性を調べるのに、還元主義的なアプローチのみに囚われることなく、階層ごとに異なるロジックで理解していく必要があることを的確に表す名称です。
絶縁体のすぐ侧の高温超伝导体
创発物性の代表例であり、物性というマクロな階層についての新たなロジックを示すことになったのが、銅酸化物高温超伝导体です(図1)。一般に、電気が物質中を流れるとエネルギーの一部が熱として失われてしまいます。しかし、超伝導体ではこのようなエネルギーの損失がゼロ(電気抵抗ゼロ)になります。
十仓教授が高温超伝导体の研究に取りかかったのは、1年间滨叠惭の研究所に留学した1980年代后半のことでした。往时の通説では、金属が电気を流す性质を极限まで高めていった先に超伝导があると考えられていました。しかし、十仓教授の研究対象だった铜酸化物超伝导体では、电気をまったく通さない絶縁体のすぐ侧で起こる创発现象として电気抵抗ゼロ(超伝导)が実现されるらしいことがわかってきたのです。
少し详しく见てみましょう。铜酸化物では、物质中の电子同士が强く相互作用した结果、电子が格子状の原子の上で固まった状态にあります。物质がこのような状态にあることを指して、强相関电子系と呼びます。このとき、电子は身动きがとれず、物质中を移动することがたいへん困难であり、超伝导とは真逆の絶縁体の状态にあります。ところが、この状态の铜酸化物から电子を引き抜くと、规则正しく格子状に并んでいた电子が一気に溶け出し、ほぼ絶縁体だった铜酸化物が超伝导体になったのです。
絶縁体から电子を少しだけ引き抜くことで物性がガラッと変わる。これは、少数の电子の状态に还元しても理解できない、まさに创発现象です。
超巨大磁気抵抗とマルチフェロイクス
その后十仓教授は、様々な物质から电子を引き抜いたり、逆に少しだけ加えたりという実験を、チタンから铜まで周期表の顺番に试していき、さらにおもしろい现象である巨大磁気抵抗を见つけ出すことになります。実际、1990年代になって十仓教授は「ペロブスカイト」と呼ばれる特殊な构造の酸化物において、磁场をかけることで物质の电気の通しやすさが1000倍以上も変化すること、すなわち巨大磁気抵抗効果を発见しました。
さて、电场をかけると电気分极(物质の両端が正电荷と负电荷とに别れて电荷を帯びる现象)が生じ、磁场をかけると磁化(物质の両端が厂と狈とに别れて磁荷を帯びる现象)が発生するというのが固体物质に生じる普遍的な现象です。
そんななか、世の中には、磁场をかけると电気分极が発生し、电场をかけると磁化が発生する。そのような物质が存在するのではないか、と予言していた科学者がいました。着名なフランスの物理学者にしてマリー?キュリーの夫、ピエール?キュリーです。
磁场をかけなくても自発的に磁化が発生する强磁性体(磁石など)や电场をかけなくても分极する强诱电体の磁化の向きや分极の正负は、それぞれ小さな磁场や电荷で反転させることができます。一つの物质が强磁性体であり、なおかつ强诱电体であり、さらに磁化と电気分极とが结びついているとすれば、ピエール?キュリーの梦见た物质が実现されることになります。
このような、复数の性质(强磁性、强诱电性、强弾性など)を示す物质をマルチフェロイック物质と呼びます(図2)。このように、电场で磁化を変化させるなど、自明ではない入出力関係も、复数の电子が集まって全体として个々の电子の総和以上の特性が现れる、创発现象の例なのです。
多数の电子スピンから生じる粒子、スキルミオン
さらに2010年には、电子スピンからの创発现象として、スキルミオンと呼ばれるまったく新しい粒子の観察を行っています(図3)。これは、十仓教授が现在精力的に进めている创発现象研究の一つです。
スキルミオンというのは、数千个もの电子スピンが涡巻状に集まって、あたかも1个の粒子であるかのように振る舞うようになったものです。やはりこれも个々の电子スピンの状态に还元しても理解することのできない创発现象であり、&辩耻辞迟;スキルミオン粒子&辩耻辞迟;は、ほとんど电力を使わずに移动させることができたり、超巨大な磁场として电子の轨道を変えたり、さらには、単极の磁石のように働く可能性すらあるといいます。
「今の时代は、応用を见据えた実験が大事になってきています」と言う十仓教授は、スキルミオンの兴味深い物性にただ魅せられているだけではなく、次世代エレクトロニクスへの大きな可能性があると考えています。ごくわずかなエネルギーで动作する非散逸型の量子回路、つまり、究极のエコデバイスの可能性です。今はまだ梦のような话に闻こえますが、これまでに物理学が起こしてきたイノベーションを考えると、数十年から数百年のうちに可能になるだろうと十仓教授は语ります。
创発物性科学研究の未来
高温超伝导体からマルチフェロイクス、そしてスキルミオン。どれも具体的なイメージを描きにくいがゆえに「创発物性科学は難しくて理解できないと言われるのに慣れているんです」と話す十倉教授。一方で、同じ分野の研究者からも様々な研究テーマを渡り歩いているように見えてしまうようです。
しかし、十仓教授本人は「一贯性がないと思われるかもしれませんが、自分の中では筋道が通っているんですよ」と语ります。「1つの原理だけで世界を理解することは难しい」からこそ、単一のロジックに还元することのできない新しい现象を探求し、そのロジックを纺いでいるというのがその真意です。
要素の総和以上の特性が全体として現れる創発現象。個々の要素からは、新しく現れる現象が予測しづらいからこそ、誰も予想しなかったような現象や科学技術分野でのイノベーションが隠れている可能性があります。创発物性科学は、物性物理学における創発現象をひとつひとつ明らかにしていくことで未来を切り開いています。
取材?文:堀部直人
取材协力

十仓好纪教授