动物の知られざる生态に迫るバイオロギング 动物の行动データを使って将来的には天候予测の向上も

大気海洋研究所の佐藤克文教授(50)は幼少の顷から野生动物に魅了されてきました。小学校3年生の夏休みの自由研究で、木工所からおがくずを集めてきては饵としてやったり、カブトムシの子どもを育てたあとそれらの体重を测り、どれぐらい重たいものを引っ张れるか调べたりしていました。
40年たった今も佐藤先生の野生动物への兴味や好奇心は衰えることはありませんが、一つ大きく违うことがあります。それは、バイオロギングという动物の生态の谜を解くためのパワフルな道具を持っているということです。
佐藤先生は、バイオロギングを使った研究の分野で日本で有数の研究者です。バイオロギングとは、小さなデータ记録装置を动物の体に直接取り付け、动物の动き、行动や生理学について详しく调べる学问手法のことを言います。
子育て中の海鸟が何百キロも飞んで饵场に行ったあと、コンパスもないのに元の巣に戻れるのはなぜでしょうか?ペンギンが水中に潜るとき、浮上の途中で翼を动かすのを完全に止めても滑らかな上昇を続けられるのはどうしてなんでしょうか?バイオロギングによって研究者は、人间の目には见えない动物の行动を明らかにすることでそれらの行动を説明する理论を生み出してきました。
「バイオロギングは今までのアプローチと全く异なります」と佐藤先生は话します。「従来の生物学では、科学者は何を明らかにしたいのかをまず吟味して、それを明らかにするにはどういう実験をやったらいいのかというのを考え、コントロールした条件下で実験をして明らかにしていくのが一般的な手法です。バイオロギングでは、研究者は调べたいことをまず横においてロガーを取り付けます。得られたデータを见てみると意外なことがわかることがあります」。
さらに将来的には、动物に取り付けられた记録计から収集されたデータが気象予测にも役立つかもしれません。従来の方法ではコストがかかりすぎたり技术的に难しかったりした海上の风の状态と水温のデータを数多く集めることができるからです。
技术の进化
バイオロギングの歴史は1964年に遡ります。アメリカ人の生物学者、骋.尝.クーイマン博士がキッチンタイマーを改良したものを使って南极のウェッデルアザラシの潜水の深さと长さを测定したことが2004年の国立极地研究所の内藤靖彦教授(当时)の论文に书かれています。内藤先生は日本におけるバイオロギング?サイエンスの先駆者です。
1980年代末から1990年代始めにかけ、技术的な「革命」が起こり、データロガーは格段に小型化、軽量化しました。
现在使用されているロガーはデジタルで、温度、圧力、照度を测ることができるほか、ビデオも撮ることができます。多くの机器には位置を判断する骋笔厂センサーや、歩数を测るためにスマートフォンに搭载されているのと同様の3轴加速度センサーがついていて、たとえばペンギンが翼を振る回数や海鸟が羽を动かす様子など、动物の动きを数値化することができます。
内藤先生や佐藤先生など、日本の研究者はバイオロギング?サイエンスの発展に重要な役割を果たしてきました。2003年にこの分野で初めての世界会议を日本で开催したことがその一例です。この会议において、动物の生态観察のためにデータロガーを使うことを「バイオロギング」と呼ぶことが决まりました。
成功に至るまでの失败の数々
佐藤先生は、データロガーの进歩とともに业绩を上げてきましたが、ここまでの道のりは平坦ではありませんでした。
1990年、京都大学农学部の卒业论文で、内藤先生が开発したロガーを使った実験についてまとめましたが、これが佐藤先生にとって初めてのバイオロギング体験でした。
当时、徳岛県の浜辺で、2头のウミガメに深度计と水温计が入った装置を甲罗に取り付け、体内の温度を调べるため温度计を饮み込ませました。ところが、一头のロガーは5日后に近くの定置网に引っかかって戻ってきました。もう一头とロガーは戻ってきませんでした。
「そこで失败したので意地になりました」と佐藤先生は振り返ります。
修士课程に入り、今度は和歌山県にフィールドを移して、再度2头のウミガメにロガーを取り付けましたが、そのうちの一头はまたもや戻って来ず、もう一头は胃の中の温度计を吐き出してしまい、いいデータが取れませんでした。
「そのとき、今までのロガーの取り付け方が亀にストレスを与えていて、そのせいで戻ってこなかったかもしれない、と考えました」と佐藤先生は言います。
そこで、より负担の少ない方法を考え、ウミガメの甲罗に寄生するフジツボに似た台座をつけて、その上に机器を固定しました。2年间の试行错误を経て、ロガーを取り付けた4头全てから良いデータを取れるようになりました。
「失败して、工夫して、また失败して、また工夫したらうまくいった、というプチ成功体験を繰り返したおかげでのめり込んでいきました」。
现在、佐藤先生によると、バイオロギングは世界中の数百人の研究者によって使われていて、日本にも20人以上の研究者がいます。しかし、まだメジャーな手法であるとは言えません。一つの动物种を何十年も研究している学者达からは「邪道」と见なされることも多いといいます。
哺乳类、カメから鸟类までを一つの研究室で
それでも佐藤先生はバイオロギングにこだわります。2004年、大気海洋研究所の教员として岩手県大槌町の国际沿岸海洋研究センターに着任し、现在は10人の学生、5人のポスドク、二人の教员を柏キャンパスの研究室に抱えます。研究室では哺乳类、海鸟、ウミガメから大型鱼に至るまで、ありとあらゆる动物をバイオロギングを使って研究しています。
青木かがり助教(38)はクジラ、イルカ、アザラシを研究しています。青木先生は大学の时、ホエールウオッチングツアーで访れた小笠原诸岛でクジラの巨大な姿に魅せられてクジラを研究する决心をしたと言います。
「クジラがいったん潜ってしまったら何をしているのかは解明されていません。人间が追尾することはできないからです」と青木先生は话します。「バイオロギングができるまではどれぐらい速く泳げるのかもわかってなかったんです。いろんな深さに潜るクジラがいて、时间をかけてそれぞれの生存戦略を身につけたのだろうと思われます。私はそれぞれのクジラがどんな戦略を持っているんだろう、ということに兴味を持って研究してきました」。
青木先生の研究の一つに、マッコウクジラの行动に関するものがあります。マッコウクジラは歯を持つクジラの中で最大で、深度2000メートルまで潜ることで知られていますが、ロガーのデータによって、ときおり海上近くで头もしくは尾びれだけが水面下に潜った状态で垂直に浮いているという「変な姿势」でじっとしていることがわかりました。
「じっとしているのでおそらく彼らは寝ているんじゃないかと思われます」と青木先生は语ります。「クジラがどう眠るかといったことは、基本的なことなんですがわかっていなくて、バイオロギングで初めて説明できるようになりました」。
同じ佐藤研究室の大学院生である木下千寻さんはアカウミガメを専门としていて、アカウミガメの代谢速度が地域によって大きく异なることについて研究しています。
「北太平洋のアカウミガメの越冬戦略は地中海のアカウミガメの越冬戦略と全然违うんです」と木下さんは言います。「地中海のカメは水温が下がると不活発になってしまうのですが、北太平洋のカメはすごく活発です。同じカメでなぜ违うのか、その生理的な背景を调べています」。
研究の「副产物」
これまで、バイオロギングは动物の生态や生理を调べるのに主に使われてきましたが、最近はまったく违った方面の、気象予测への応用の可能性が注目を浴びています。
博士研究员である后藤佑介さん(31)は、海鸟、特にオオミズナギドリの研究をしています。后藤さんは海鸟に骋笔厂を取り付け、北海道まで饵を取りに飞行した后に岩手県冲の岛にある巣に戻ってくる过程の海鸟の毎分ごとのデータから海上の风の方向と风速を推定しました。
これらのデータは海鸟の移动戦略を理解するのに役立つのみならず、気象予测の质も大きく向上させる可能性がある、と海鸟の研究で今年3月に东京大学総长赏を受赏した后藤さんは话します。
后藤さんを含む佐藤研のメンバーは、过去2年半にわたって、动物に取り付けたロガーから収集したデータがスーパーコンピュータに取り込まれたときに実际に気象予测を改善するかどうかを他机関の研究者との共同研究で调べています。
现在、海上风に関するデータは非常に限られていると佐藤先生は话します。なぜなら、人工卫星は一日2回しか同じ场所のデータを集めることができず、また海岸から100キロ以内の海上も、海岸近くの岩や硬い物体に卫星の电波が乱反射されるためデータが取れないからです。
海洋気象ブイも水深3000メートルもある外洋では海底に固定できないので実用的ではありません。しかし动物に搭载したロガーなら、大きな移动距离をカバーし、気象シミュレーションに必要なビッグデータを提供できるかもしれないのです。
「気象科学に寄与できる可能性のあるこれらの情报は我々の研究の副产物です」と佐藤先生は话します。「でもその副产物にはものすごい価値があります。动物のデータを入れたら天気予报がよくなるなんて、痛快じゃないですか?」
取材?文:小竹朝子
取材协力

佐藤克文教授

(左から)木下千寻大学院生、后藤佑介博士研究员、青木かがり助教