「男性の大学」からの脱却 |ダイバーシティと东大 01|林香里理事?副学长の巻

このシリーズでは、東京大学のダイバーシティ(多様性)に関する課題や取り組みを、教員たちへのインタヴューを通して紹介していきます。 東京大学は多様な背景をもった人たちが、活き活きと活動できる場の実現を目指します。
谁もが自由に、伸び伸びと学び、研究できるキャンパスへ

本郷キャンパスの本部栋エントランスには、女子高校生に向けた8种类のメッセージポスターが展示されています。
1992年に、记者から心机一転、东京大学の社会学研究科に入学し、研究者の道を歩み始めた情报学环教授の林香里先生。幼い子どもを二人育てながらの研究生活は大変で、保育园の闭园时间ギリギリにお迎えのときは、电车の中で走りたくなることもしょっちゅうでした。院生室や研究室でオムツを替えることもありましたし、保育园が休みのときは子どもを上野动物园に连れていった帰りに大学に寄ったり、男性しかいない学食で子どもを抱っこしながらごはんを食べたり。研究者の圧倒的多数は男性で、学会では男性がトップを占め、女性は事务员さんと林先生だけというのが当たり前。思い出せばキリがない厳しい环境を振り返り、「ガラスの天井どころか、鉄板を背负いながらやってきました」と话します。

それから约30年。2021年4月、东京大学では藤井辉夫総长の下、任命された理事の过半数が初めて女性になり、学外からも大きな反响を呼びました。そのうちの1人がダイバーシティ(多様性)と国际を担当する林先生です。ジャーナリズム论の専门家として、长年メディアにおけるジェンダー问题などに取り组んできた林先生は、「やっとここまで来たか、という感じ」と话します。最近では、男性教员から「ダイバーシティは大切」といった90年代には闻くことのなかった言叶も闻こえてくるようになり、周囲の意识の変化を感じると语ります。
とはいえ、东大全体を概観すると依然として圧倒的多数は男性で、ダイバーシティに関しての现状は「マイナスからの出発です」と指摘します。「私たちがどこに立っているかということをきちっと认识した上で、出発しなくてはいけない」
2020年度の「东京大学の概要」によると、准教授に占める女性の割合は約13.9%、教授になるとより少ない8.3%です。今年4月に学部入学した女性の割合は21%。大学院では昨年度は27%でした。現状について林先生は、「大学の競争力をつけるためには優秀な学生が必要です。多くの才能ある学生を教育し、世界レベルの研究者を育てるという(大学の)ミッションからすると、やはり女性学生が2割で男性が8割というのはあまりにもバランスが悪い」 と話します。
「ダイバーシティとインクルージョン(包摂)は、トップの大学として社会から负託された责任であり、また必要な戦略なんだというコンセンサスを全学から得る必要があります。そのために、まずは意识改革から手を付けていかないといけない。これは东大のレボリューション。大きな仕事だと思います」
出典:东京大学の概要
「女性にとっての东大」を考える
1877年に创立された东京大学。初めて女性が入学したのは约70年后の1946年でした。19人という少ない人数から始まり、その数は少しずつ増えてきましたが、少数派という状况は今日まで変わっていません。
この「男性の大学」という东大のイメージ。それが长らく肯定的に捉えられてきたのではないか、と林先生は话します。「东大に入学するということは、官僚を代表とする立身出世につながり、ステータスシンボルになってきた。そのように思ってもらえるのは大学としてはありがたいことですが、それは社会の片侧、男性の社会についてだけです」
女性にとって东大に入るとはどういうことかと考えてみると、どこかでポジティブなものになっていない、と指摘する林先生。「今まで东京大学は日本人の男性に教育を施すという视点が既定値になってきた」と话し、続けて、「女性は东大にどこまで歓迎されてきたか。女性と东大の関係はより复雑で、その原因は大学侧にもあるということを深く反省しなくてはならないと思います。ダイバーシティとインクルージョンを大学のビジョンにする以上、こうした日本人男性中心の歴史とともにある现在について、真剣に考えていく场が必要です。そして、この问いは、尝骋叠罢や、障がいのある学生、留学生などにとっても同じことがいえるでしょう」と述べます。
「構造的抑圧」という言葉を理解する必要があると林理事はいいます。長い歴史の中、圧倒的多数を男性が占めてきた環境では、意図しなくてもその他の少数派が周縁化され、抑え込まれてしまいます。研究は競争の世界なので、どんな人も自由に意見を言い、切磋琢磨していかないと高め合うことはできないのだと説明し、「だれもが同じスタートラインについて成長してゆける大学を目指していかなくてはいけない」 と語ります。
女性の学生、研究者への支援
女性がマイノリティであり続けている状况に、东大は手をこまねいてきたわけではなく、2006年に男女共同参画室を立ち上げ、様々な取り组みを行ってきました。女性学生への家赁支援、现役女性学生による母校访问、トイレなどの整备、そしてポジティブ?アクションとしての女性研究者支援。これらのプログラムの効果が少しずつ表れてきていますが、まだまだやることはある、と林先生は话します。
その一つが现役の女性学生をはじめ、マイノリティの学生たちへの支援强化です。キャンパスには极端に女性が少ないことから、女性特有の悩みがあっても相谈できる人が周りにいなかったり、寂しかったりという声が闻こえています。性的マイノリティの学生たちも孤立しています。そしてなにより、マジョリティの男性学生には意识改革のトレーニングをしていただきたい、と林先生は述べます。そうした男性、女性を含めた次世代の学生たちへの包括的な教育、ケア、ネットワーキングの强化を実施する「次世代育成部会」を、男女共同参画室内につくることを计画しています。现在、设置のためのワーキングループを立ち上げました。
このほか、学生にダイバーシティやインクルージョンについて理解してもらうため、学部の1、2年生を対象にした启発动画コンテンツを现在準备しています。さらに、キャンパスの现状を把握するため、学生、教职员を対象に「ダイバーシティに関する意识と実态调査」を昨年12月から今年1月に行い、集まった回答を现在分析しています。
ダイバーシティ?国际担当理事として林先生が目指すのは、东大を谁もが心地よく研究でき、教育を受けられる场にすることです。そのために、男女共同参画室、、国际化教育支援室といったそれぞれの専门を持つ「室」に横串を通して、真にインクルーシブなキャンパスを考える包括的な场も作り、いろいろな先生方と话し合っていきたいと话します。
「とにかく、东大のキャンパスで、ジェンダーとかダイバーシティというテーマをメインストリーム化したいのです。これに取り组まないと研究者として偏っているよ、意识しないとだめだよという规范意识を皆さんに持ってもらうために。それが私の役割であり、目标です」