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平成28年度东京大学大学院入学式 総长式辞

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式辞?告辞集 平成28年度东京大学大学院入学式 総长式辞

 

本日ここに东京大学大学院に入学された皆さん、东京大学の教职员を代表して、心よりお祝いを申し上げます。また、ご家族の皆様にも、心からお庆び申し上げます。

本年4月に东京大学大学院へ入学したのは、修士课程が2,860名、博士课程が1,243名、専门职学位课程が345名、合计4,448名です。皆さんは、これから始まる、研究と学びへの期待に胸を膨らませていることと思います。东京大学大学院は、规模、学问分野の幅、研究水準の叁点において、世界有数の大学院です。この恵まれた环境を存分に活用して、学问に悬ける梦を育み、それを叶えて下さい。私たち教职员は、皆さんの梦の実现を全力でサポートしたいと思っています。

 

さて、东日本大震灾から丸5年が経ちました。皆さんの中にも、被灾地出身の方あるいは知人や亲戚が罹灾された方がおられるでしょう。震灾を経験し、復旧と復兴の中で、困难を乗り越えて勉学に励まれたことに敬意を表します。これまで东京大学の多くの教职员や学生诸君も、さまざまな復兴支援の活动に参加してまいりました。私は昨年4月に総长に就任致しましたが、8月末に、被灾した岩手県大槌町にある大気海洋研究所の国际沿岸海洋研究センターを视察し、大槌町の市街地域、陆前高田市、后方支援の拠点となった远野市を访问致しました。大规模な土盛り工事が进められてはいるものの、街が以前の活気を取り戻すにはまだまだ多くの知恵と忍耐が必要だと感じました。私たちはこの事を心にしっかり留めて置かねばなりません。东京大学は復兴支援の活动をこれからも続けていきます。皆さんも学业の傍ら、この復兴支援の轮にぜひ加わって下さい。

 

私は、本日午前中に行われた学部入学式で、新入生の皆さんに対して、新しい知を创造し、知をもって人类社会に贡献し、行动する人材、すなわち、「知のプロフェッショナル」となるよう努力と挑戦を続けてほしいと伝えました。そのために、特に次の3つの力を锻えてほしいと强调しました。「自ら新しい発想を生み出す力」、あきらめず「忍耐强く考え続ける力」、そして「自ら原理に立ち戻って考える力」です。

この基础力をもとに、知を创造し、そこから価値を生み出すには、他者に心を砕き、知恵を出し合って一绪に行动することが必要です。そのためには「多様性を尊重する精神」と自分の立ち位置を见据える「自らを相対化できる広い视野」を持つことが必要であると述べました。

大学院生となった皆さんには、こうした力に一层磨きをかけ、実际に行动することで、「知のプロフェッショナル」として大きく成长してほしいのです。まさにこれからが本番です。自信と勇気をもって前に进んで下さい。

 

东京大学は本日、创立139周年を迎えました。创立以来、アジアの地にあって、东西両洋の学术を基础としながら、独自の学问を培ってきました。私は総长に就任して以来、学内の幅広い分野の先生方とお会いする机会が多くなりました。运営にたずさわる傍らで、东京大学が创りあげてきた広くて深い学问に触れることが楽しみになっています。

なかでも、歴史、文学や言语の研究は比类のない蓄积があり、东京大学が独自に长年育んできた文化の中で、とりわけ重要な役割を担っていると私は感じています。グローバル化が进む中で、知の多様性は、人类社会の安定性を保つための键となるのです。

ここで、私が感动した东京大学での深い学问の例を绍介したいと思います。それは私达がいま话し、闻き分けている日本语という言叶に関する研究です。

现在、日本语はアイウエオという5つの母音を持っています。それが、奈良时代には、母音が8つ存在していたという説があることを皆さんはご存じでしょうか。奈良时代には、もちろんレコーダーなど音声を记録する机器は全くなかったので、昔の人々がどんな発音をしていたのかを直接に知ることはできません。では、どうやってそのような结论を导くことが出来たのでしょうか。


桥本进吉先生
(大正15年3月撮影)
 

私たちの東京大学で国語学を研究していた桥本进吉先生がこの説を立てたのです。橋本先生は、皆さんが中学や高校の国語の授業で習う「文節」という概念を提唱し、日本語の文法を体系づけた研究者として有名です。いまから百年ほど前に、文学部の国語研究室の助手として万葉仮名の研究を進めていました。そして『万葉集』や『古事記』などの奈良時代の文献に仮名として使用される漢字の中で、五十音図のイ段?エ段?オ段の音のいくつかに、明確な使い分けがあることに気付きました。同じ音を表すものであっても、単語によって表記される漢字に使い分けがあるという事実を見い出したのです。たとえば太陽の光である「ひ」と燃える「ひ」は、現代では発音が同じです。音が同じなので、語源は共通なのではないかとする説もありました。しかし、橋本先生の研究によって、かつては発音が異なっていた可能性が明らかになり、もとは別々の言葉であったと推定できるようになったのです。

注目すべきは、大正から昭和初期にかけてのこの桥本先生の独自の调査研究の过程で、実は埋もれていた江戸时代の先駆的な研究が発掘され、新たに评価されたということです。本居宣长は『古事记』の万叶仮名について调べ、文字使用上の区别があることを早くに述べていました。その宣长の研究を受け継いだ弟子の石塚龙麿は『日本书纪』『古事记』『万叶集』の调査を行い、桥本先生が见い出したことと近い事実に気付いていたのです。石塚はその调査结果を『仮字遣奥山路』(かなづかいおくのやまみち)という书物に残しました。しかし、これは、出版されなかったために、人々に広く知られることはありませんでした。また、石塚自身も、発见したことの意味をよく见抜けず、事実の整理も不十分であったと言われています。ところが、本学文学部の国语研究室にこの石塚の着书の写本が所蔵されており、百年以上を経て、桥本先生によって読まれ、先行研究として検証され、ようやくその指摘の重要さが理解されたのです。桥本先生は、ご自身の研究について、二重の意味における発见をしたのだと述べられています。ひとつは特殊な仮名遣いを再発见したこと、そしてもうひとつは石塚龙麿の隠れた仮名遣い研究の発见です。

言叶は人间の知的な探究の作业をささえると共に、その结果を时代を超えて伝える媒体です。言叶の変化を分析し、その歴史を把握することは、过去の社会の様子や人々の思想を正确に知るための手がかりとなるのです。そして文书资料に正しいタイムスタンプを与えるという重要な意义もあるのです。歴史の顺序や地域の交流の変迁を知る基盘となるものなのです。

 

さて、いま一例としてあげた桥本先生の研究は、大学で学ぶべき学问について2つの重要なメッセージを含んでいると思います。

第一は、论理的思考の重要性です。研究には2つのステップがあります。最初は、调査や実験によって得られたデータを集积して分析し、ある现象が起こっていることを発见することです。次は、见つけた现象について论理的に考察を重ね、背景にあるこれまで谁も知らなかった原理をあぶり出し、体系を説き明かす学説にまとめるという段阶です。これらのステップを経て、新たな知恵として人类が共有できるようになるのです。

江戸时代の石塚龙麿は第一の段阶にとどまっていたということになります。桥本先生は使い分けのある汉字を甲类?乙类として整理し分析することで、その背景にある音韵の违いを论証されたのです。この学説がさらに日本语の起源や系统についての研究へと大きく発展していったことを考えると、事実の発见にとどまらず、论理的思考によって新たな体系を示すことの大切さが示唆されているといえるでしょう。

第二のメッセージは、学问研究の时间スケールです。学问を通した、人类社会への问いかけは、私たちが生きているその时々の社会にとどまるものではありません。桥本先生の调査と分析は、千年以上をさかのぼる记纪万叶の时代を対象としつつ、过去から未来への言叶の连続や断絶を探るものでした。さらにその过程で江戸时代の研究に出会い、埋もれていた膨大な研究を発掘し、その価値を再発见し、先人の研究に新たな生命を吹き込んだのです。

このエピソードは、过去から未来に流れる永い时间スケールの中で、时を超越した真理の深渊を探究することにこそ学问の真の魅力があるということを伝えているのです。过去を调べるということは、たんに昔を振り返るということではなく、未来の姿を予言し见通すということにつながるのです。これこそが学问の普遍的な使命だと私は考えます。

永い时间スケールの営みを维持することにも、われわれのたゆまぬ努力が必要です。残念なことに、国语研究室に所蔵されていた『仮字遣奥山路』(かなづかいおくのやまみち)の贵重な写本は大正12年の関东大震灾で焼失してしまいました。现在では桥本先生が震灾以前に笔写された本が残されています。また第二次世界大戦末期には、大学が所蔵する贵重な书物や文化财をトラックや马车、大八车などに载せて山梨県や长野県まで疎开させ、空袭からなんとか守ったという话も伝わっています。书物を后世に伝えるために先人たちが大変苦労されたからこそ、いまの私たちがそのデジタル化を行なうことができるのです。东京大学の伝统とは、こうして先达の献身によって守り受け継がれたものであることを覚えておかねばなりません。现在、本郷キャンパスでは、滨田纯一前総长の决断により、地下40メートルの大规模书库建设が进められています。これもこの伝统を引き継ぐための事业であると私は考えています。

 

さて、もう一人、「知のプロフェッショナル」について绍介したいと思います。午前中の学部の入学式で祝辞を顶いた东京大学宇宙线研究所长の梶田隆章先生です。ご存じのように梶田先生は、昨年秋、ノーベル物理学赏を受赏されました。梶田先生の受赏は、岐阜県の神冈鉱山に建设したスーパーカミオカンデを使って、ニュートリノが质量を持つことを証明した成果が评価されたものです。これは、20世纪后半に完成したと思われていた素粒子物理学の「标準理论」というものの限界を明らかにする画期的な成果です。

 

梶田先生は大学院修士課程に入学して小柴昌俊先生の研究室に入ります。そして、ちょうどその頃開始された、スーパーカミオカンデの前身のカミオカンデでの実験に参加しました。カミオカンデという名前はKamioka Nucleon Decay Experimentすなわち核子崩壊実験、という意味です。当時の素粒子理論の最先端の研究により、物質は永久不滅ではなく寿命は有限だと考えられるようになりました。そこで、小柴先生達は、物質の基本要素である、陽子などの核子が崩壊する様子を実験で捉えるプロジェクトを開始したのです。何しろ、物質は不滅と思われていたのですから、陽子はごくごくまれにしか崩壊しません。その信号を捉えるのは大変難しいのです。ニュートリノの信号はその計測のじゃまをするので、丁寧に取り除く必要がありました。当時、大学院生の梶田先生はその地道な作業を続ける中で、大気で発生するニュートリノの信号の性質を丹念に調べていました。その中で、おやっと感じる異常に気がついたと言うのです。それが発端となり、ニュートリノ研究が梶田先生のライフワークとなったのです。このように、大学院時代の研究がノーベル賞につながったという例は沢山あります。一昨年ノーベル賞を受賞された名古屋大学の天野浩先生も青色発光ダイオードの開発は大学院生時代からのテーマでした。本日、大学院の門をくぐったばかりの皆さんもぜひ大きな夢をもって研究に取り組んで下さい。

 

ニュートリノの実験は、前例のない大がかりな装置による壮大なプロジェクトです。小柴先生、戸塚洋二先生、そして梶田先生へと受け継がれ、国内外の研究者や大学院生の协働はすでに40年近くに及んでいます。この成功の背景には、この间に日本が豊かになり、かつ平和を维持できたことがあるのです。梶田先生の発见は、すぐに何かに役立つというものではありません。梶田先生の言叶をお借りすれば、「人类の知の地平线を拡大する」研究です。このような、真理の深渊を长期间にわたり探究し続ける自由が与えられたこと、すなわち自由な学问活动に対して、国民からの付託が途切れなかったということの価値を私たちはしっかり心に留めておく必要があります。

 

以上、二人の先辈の研究を绍介しました。どちらも、既存の概念に囚われずに発想を転换し、忍耐强く课题に取り组み続けた结果です。そうして生み出される研究成果が人々を感动させ、世の中の见方を変え、パラダイムシフトへと导くことが可能になるのです。

3月に行われた大学院の学位记授与式で、修了生の代表による答辞に、「大学院の日々は、私にとってはかけがえのない、赘沢で贵重な时间でした」との言叶がありました。そうです、大学院生の特権は、自分の意思で使える时间がふんだんにあるということです。后に振り返るとその贵重さがわかります。皆さんには、ぜひその时间を大切にして、学问を创る喜びを満喫し、研究する人生のもつ素晴らしい魅力を感じて顶きたいのです。

 

さて、ここでその学问に求められている课题についても少し触れておきたいと思います。20世纪は科学の世纪と呼ばれ、自然科学は飞跃的に进歩し革新的な技术が次々に生まれました。その结果、人类の活动规模は飞跃的に拡大しました。人々は国境を越えて活动し、世界中の出来事を瞬时に知ることもできるようになりました。しかし一方で、人间の行為が地球そのものに回復困难な変化をもたらし、人类の存続をも胁かすものになっています。宗教的な対立や国际纷争の复雑化は加速するばかりです。人类が英知を绞り、长い年月をかけて生み出した、资本主义や民主主义という社会を动かす基本的な仕组においても、その制御が追い付かず、格差の拡大など不安定性は拡大しています。安定で平穏な世界を构筑するためには、人类の英知が駆动する新たな社会や経済の仕组みを考え出すことが必要なのです。东京大学は东京大学宪章にあるように世界の公共性への奉仕を誓っています。この新しい仕组みを提案し、率先して行动し、社会を変革する駆动力を生み出すことが、东京大学の责务であると、私は考えています。

 

私は大学院を改革し強化することが喫緊の課題だと捉えています。皆さんの学びを支援するプログラムもいろいろ用意しています。ぜひ積極的に活用して下さい。また、社会を大きく変えていくためには、教員、学生、社会人の多様な人々が、大きなビジョンを共有し、世代や组织を超えて深く混ざり合って協力して働くことが必要です。そのために「知の協創の拠点」を創っていきます。さらに、皆さんが「研究する人生」に魅力を感じることができるように、研究者の雇用環境の改善にも努めていきます。

 

大学で学び、研究する私たちが果たすべき役割は、先人たちのたゆまぬ努力の中で蓄积されてきた成果を継承しつつ、さらに学问を深めて新たな価値を创造し、変革し続ける社会をうまく駆动させる知恵を生み出すことにあります。东京大学ではさまざまな分野で世界最先端の研究が进められています。そして、伝统によって筑かれた豊富な蓄积もあります。私は21世纪を担う皆さんと共にその现场に立てることを、幸运だと思っています。共に梦を抱きながら课题の解决に挑戦し続け、新たな価値や伝统を一绪に创り出していきましょう。

 

最后になりますが、皆さんが、他者に心を砕き、知恵を出し合って行动し、人类社会に贡献する「知のプロフェッショナル」となるためには、皆さん自身の心身の健康が第一です。大学院生の生活は不规则になりがちです。毎日の朝ご饭をしっかり食べ、规则正しい生活を心がけて下さい。そして、研究のあいまに时间を见つけ、自分に适した形で、运动をする习惯を身につけてください。

皆さんが元気に活跃されることを期待しています。

 

平成28年(2016年)4月12日
東京大学総長  五神 真

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