
书籍名
第叁者効の研究 第叁者规律の基层
裁判所の判決は、原則として、訴訟手続に参加した者に対してのみ効力を有するところ、行政庁の処分を取り消す判決 (取消判決) は、例外的に、訴訟手続に参加していなかった者 (第三者) に対しても効力を及ぼす (行政事件訴訟法32条1項)。本書が対象としたのは、この判決の「第三者効」の「意味」と「機能」である。従来、いくつかの法分野の狭間に落ち込んでいたテーマであったが、主題そのものを素直に突き詰めたことで、知る人ぞ知る秘境をブルー?オーシャンに拓くことができたと自負している。
一方で、第三者効の「意味」に関しては、日本の訴訟法がドイツ法に多大な影響を受けているために、これをドイツ法由来の概念の下で理解するのが一般的である。しかし、取消判決の第三者効それ自体はフランス法に由来しており、これをドイツ流に理解すると的確に捉えられない。かといって、フランスの理解をそのまま持ってくると、ドイツ法由来の日本の訴訟法に整合しない。このボタンの掛け違いを正すべく、ひとまずドイツの学説史を遡ったのが、本書の第1部である。そこでは、日本でもドイツでも漠然と使われている「形成力 (Gestaltungswirkung)」の概念に、異なる二つの意味が与えられてきたことが確認できた。より根本的には、第三者に対する法変動の通用性を対抗性 (opposabilité) として捉えるフランスと、有効?無効の二分論で捉えるドイツで、物の見方の根本が異なっている印象があり、用意を整えて再度学説史の襞に分け入りたいと思っている。
他方で、第三者効の「機能」の核心は、法関係が人によってまちまちに確定されることで生じる混乱を避ける、という点にある (紛争の画一的解決)。興味深いことに、ドイツでは、日本やフランスとは異なり、取消判決に第三者効は認められていない。とはいえ、ドイツでは取消判決により影響を被る一定の第三者を必ず訴訟に参加させなくてはならず (必要的参加)、それにより利害関係人のすべてに判決の効力を及ぼすことで、紛争の画一的解決が達成されている。本書の第2部では、こうした対照的な法制をもつドイツの現状を紐解いた。結果、ドイツがこだわっているのは、手続に参加させることと引き換えに紛争の蒸し返しを禁ずることを通じた紛争の一回的解决であり、逆にフランスは纷争の暂定的解決を許容してきたこと、日本は独仏のいいとこ取りを狙える仕組みを持て余していることが分かった。第2部のダイジェストはドイツ人にとっても面白いだろうと思い、ハイデルベルク留学中にドイツの査読誌に投稿したところ、当該雑誌初の日本人著者となった ()。
敢えていろいろと盛り気味に書いたが、学部生時代のゼミの報告を機に抱いた違和感のみを手がかりに、数々の輝かしい先行業績におんぶに抱っこで、実に10年の歳月を費やして何とか完成にこぎ着けたというのが正直なところである。法学に関心があるものの、研究の途に踏み入ることを躊躇している方には、本書を書いたのが、当初はドイツ語もフランス語も (英語も満足に) 読めず、漠然とした好奇心を持て余していた、一人の元法学部生であることを伝えておきたい。触発されて臆せずに法学研究の門戸を叩いてくれる方がいれば、望外の幸せである。
(紹介文執筆者: 法学政治学研究科?法学部 准教授 巽 智彦 / 2021)
本の目次
第1部 形成概念と第叁者効
第1章 第叁者効と第叁者再审
第2章 形成诉讼论と対世効
第3章 形成力の意义
第2部 纷争解决と第叁者効
第1章 ドイツにおける行政纷争解决
第2章 対世効による纷争解决
第3章 我が国における行政纷争解决
结 论
関连情报
令和3年度「滝井繁男行政争訟奨励賞」受賞 (公益財団法人 日弁連法務研究財団 2021年11月)
関连记事:
Tomohiko Tatsumi: Einheitliche Streitbeilegung im Verwaltungsprozess - Beiladung und inter-omnes-Urteilswirkung in Deutschland, Frankreich und Japan (From the journal “Zeitschrift für das gesamte Verfahrensrecht” – GVRZ (Otto Schmidt Feb 6, 2020)